野生のツキノワクマが人里に降りてくる事は多々あるのだが、その主な理由は山林でのエサ不足だと思われている。特に秋口はドングリ類が不足によって、出没件数が変化すると思われており、今年は出現数が多い年のようだ。東北や北陸などで、昨年を上回るペースで目撃が報告されている(河北新聞社)。
そこで、あるNPO日本熊森協会が、公園でドングリを拾い集め、熊がいそうな山奥に運ぶ活動を行ったそうだ(中日新聞)。しかしこの活動は、専門家から激しい批判にあっている(保科(2004))。
反対意見を要約すると、問題は3点に絞られる。
- 1. 散布するドングリに虫や菌が入り込んでおり、それらを拡散する可能性がある
- 配布する地域に外来種を招くことで、自然環境を破壊する。
- もともと生息していた個体との交雑による遺伝子撹乱が起こりうる。
- 配布する地域に存在しない害虫が紛れ込んでいる場合、林業・農業被害をもたらす可能性がある。
- 2. ドングリの配布でクマの保全は行えない
- ネズミかイノシシ、カケスなどの他の動物が先に、散布されたドングリを食べる。
- クマの活動範囲から、せいぜい数頭のクマしか散布されたドングリを食べない。
- 落ちているドングリを熊は食べないという指摘もある。
- 3. 野生のクマの行動を変化させる可能性がある
- 人間の臭いになれたクマが、人里に降りて来る可能性が増す。
つまり、害があるし、効果も無いと言う事のようだ。
そもそも、もしドングリ配布がクマの保護に有効だとしても、飢え死にするクマが減るので、クマの数が増える事になる。この場合は、必要な餌の量が増えるのでエサ不足が深刻になり、人里に降りて来るクマが増加することになるだろう。
この団体、2004年にも激しく批判されていているのだが、反省する気は全く無いようだ。また、散布したドングリがどの程度のクマに食されたかの追跡調査は行っている様子は無い。つまり活動に科学的根拠を欠く。
なお、近年では多いクマの出没件数だが、2007年に比較すると多くはないようだ(中日新聞)。今回のドングリ類の不作で、即クマが絶滅するわけでもない。クマの保全がしたければ、地道にその生育環境を整備していく方が健全であろう。
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