2010年10月10日日曜日

尖閣諸島領有権問題に関連して、日本が抱える5つの政策的課題

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残る1名のフジタ社員も解放され、中国の政府系報道機関のトーンダウンもあり、日中関係も小康状態になったが、日本が抱えている政策的な課題が解決しているわけではない。

衝突事件を撮影したビデオの公開や、ガス田の共同開発を巡る交渉が話題になっているようだが、前者は検察と政権与党の対応が適切であったかを評価するためで対中問題ではないし、後者は相手が中国共産党である以上、日本側でできる努力は限られているのが現状だ。

しかし、中国相手に外交交渉に関連して、他に行える、もしくは行うべき政策幾つもある。今回の問題に強く関連している以下の問題は以前から議題に上っているが、未解決のまま置かれている。

1. 普天間基地代替施設移設問題
未だに沖縄県から県外移設の要請が出ているが、既に辺野古沖現行案で日米合意がされている状態なので、政府は合意を履行する必要がある。これは10年間をかけて勧めて来た計画であり、合意事項なので、履行できない場合は、日米安保体制が崩壊すると考えてよい。
2. 次期戦闘機(F-X)の選定問題
中国人民解放軍は、過去に領土問題でベトナムやインド、ソ連と交戦しており、偶発的にしろ日本と交戦する可能性はある。対抗するには制空・制海能力が必要だが、自衛隊に要となる次期戦闘機の機種選定さえできていない。しかも、次期戦闘機の選定は何年も遅れており、現行機のF-4の寿命が既に限界に達しており、このままでは自衛隊の運用に支障が出る恐れがある。
3. 防衛能力・防衛費の妥当性の検証
近年の日本の周辺は、北朝鮮や中国の問題により情勢は急激に変化している。また、日本の領海は広く、現行予算で適切な防衛が可能なのか、技術的な再評価が必要だ。なお、2010年度の防衛費は約4兆8000億円(GDP比で約1%)で、子供手当ての5兆円に届かない規模に過ぎない。米国の方が展開範囲が圧倒的に広いので比較にはならないが、米国はそのGDP比の4%、金額で日本の10倍以上の軍事費を投入している。
4. 集団的自衛権の是非の検証
現在、インドがアクサイチンで、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが南支那海で、中国と領土問題で紛争を抱えている。過去にはロシアも中国と国境紛争を展開していたし、チベットも独立か自治を目指しているようだ。
これらの国とは利害が一致するため、中国に対抗して同盟関係を結ぶ事も検討に値する。もちろん、憲法第9条の問題があるが、憲法第11条は国民の権利を保障していることにも考慮すべきだ。
5. 海外直接投資の中国からの分散
中国への依存度が高い企業は、今回のような偶発的に発生する政治問題で経営危機に直面するため、対中投資の比率を低下させる必要が出てきた。だが中小企業の海外進出においては、情報収集能力や資本力の問題で、容易に脱中国を果たせるわけではない。政府機関の支援など、脱中国戦略を支援する政策の検討が必要になるだろう。なお、中国の賃金上昇が問題となっているため、コストの問題で脱中国を行いたい企業は多数存在する。

尖閣諸島領有権問題は棚上げになっただけで、中国とは今後も軋轢が予想される。そして平和的な外交交渉だけでは、恐らく問題は解決しない。その理由は過去の中国政府の動きを見れば明らかで、中国は可能ならば軍事的手段に訴えて来るからだ。軍事的な決着をつける必要は無いのだが、軍事的に対抗できるように手を打っていく必要はある。

もちろん国内の反対勢力もいるので、政治的にうまく駒を進める必要はあるだろう。しかし、全く駒を進めないと、将来的に外交的に窮地に陥る可能性は高い。第二次世界大戦前の2大政党である立憲政友会と立憲民政党は政争を繰り広げた結果、外交的に機能不全に陥り、その後の戦禍を招いた。現在の二大政党である自民党と民主党も、国会内での蓮舫・片山さつき両氏の撮影問題と小事で非難の応酬をしているが、同様に機能不全に陥っているのではないかと心配になる。

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