2010年9月23日木曜日

幻覚剤で末期ガン患者の不安を和らげる

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現在の医学では、どうしても助からない患者は多数いる。

そういう患者に対しては、末期医療として苦痛や不安の緩和が、医療現場の課題になっている。日本でも苦痛の緩和でモルヒネを使う事ができるが、死への「不安」を和らげることはできない。そこで欧米では、禁止薬物のLSDMDMA、マジックマッシュルームの利用が試されつつあるらしい。

1. 幻覚剤の臨床実験は、最近になって再開された

これらの薬物は強力な幻覚作用を持ち、常習性もあることは良く知られており、社会問題を引き起こして禁止薬物になった。このため、70年代以降は政治的・社会的圧力から研究が進んでいなかったのだが、最近、米国で臨床実験が行われるようになったようだ(WIRED VISION)。

2. 幻覚剤は末期がん患者の不安を緩和する効果がある

Telegraph.co.ukが、カリフォルニア州ロサンゼルのLA BioMed研究所のCharles Grob教授のマジックマッシュルームの臨床実験、Mail Onlineがカリフォルニア州Harbor-UCLA医療センターのCharles Grob教授のLSDの試験を伝えている。前者では依存性を含む心理的・生理学的な副作用が無く、スコア化された不安が低下し、後者では末期がん患者の女性の不安が緩和されたとある。正しい方法で処方できれば、幻覚剤の働きを望む方向にコントロールすることが可能なのかも知れない。

3. 米国では、麻薬や幻覚剤の利用を許容する声がある

近年、アメリカではマリファナの合法化を推進する声がある。以前、薬物依存に関する研究を紹介したが、薬物を限定的に利用することが可能だと考えている人が増えているようだ。

医療現場での幻覚剤の利用との関係は明確ではないが、幻覚作用を持つ薬物への期待が高まっているのかも知れない。上記の研究も、そういう社会的風潮から出てきている可能性は否定できないであろう。

4. 臨床範囲の拡大は、社会的なリスクを伴う

上記の臨床例は末期医療なので薬物依存症が大きな問題になるとは思わないが、利用範囲が広がると問題が出てくるかも知れない。日本のリタニン(メチルフェニデート)の事件では、処方薬であった向精神薬が乱用されていた実態が広く報道されていた。病状の明快な検査方法が無いため、薬物乱用者が気分傷害を訴えるだけで、医者が容易に診断を下し、向精神薬を不必要に処方しがちな事が指摘されている。

5. 薬物は社会問題を引き起こしがち

英国政府のレポートでは、薬物影響下の自動車の運転が重大な事故を引き起こしがちだと報告されている(弁護士小森榮の薬物問題ノート)。元タレントの田代まさしが薬物で身を持ち崩し行く報道を目にしている人は多いであろう。

薬物利用の安易な緩和は、医療現場で患者の不安を解消することができても、社会的な不安を増大させる可能性がある。Telegraph.co.ukが伝える英国の音楽セラピーであれば、失敗しても社会的影響は少ないので歓迎しやすいが、幻覚剤の利用は極力慎重に行って欲しいと思う。

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