2010年8月1日日曜日

ドイツの風力発電と、高い電気代

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Mail Onlineに、右のフーズム近郊の風力発電所と羊と虹の写真がアップロードされていた。ちょっと不思議な光景に感じられるかも知れないが、今は羊と風力発電はドイツの特産品だ。写真のドイツでは、風力発電所が多数立てられており、2009年では全体で25,777万KWと、全電力の10%程度を供給している。日本は2,056万KWで、ドイツは12倍以上、風力で電力を生産しているのだ。

ドイツというと、環境問題に関心が高いように思えるが、実は発電の主力は、2008年で電力生産量の46%程度と、石炭を使った火力発電であり、現在でも大きくは変わらない。しかし、1998年のシュレーダー政権時に脱原発と、再生エネルギー重視の方向を決め、電力会社は再生可能エネルギーとコージェネレーションからの発電電力を買い取ることを法律で義務付けられた。固定価格での買い取り制度で、風力発電による電力生産は順調に拡大し、結果として風力発電の電力生産コストは大きく下がった。今や風力発電の設備(風力タービン)も、風力発電による電力もドイツの輸出品になっている。米国市場でも、シーメンスやヴェスタスのシェアが大きい。2008年に風力発電量で米国に抜かれ、欧州ではスペインと競っているが、ドイツが風力発電の先進国であることは間違いない。

ドイツの風力発電にも幾つか問題があって、クリーン・エネルギーはまだ競争力が無く買い取り制度で成り立っているため、発電コストが高い。それは電気代に反映されており、例えばデュッセルドルフでは1KWが0.25ユーロ(約29円)と、東京電力の18円/KWに比べてかなり高い。また、天候で発電量が安定しないことや、需要に発電量が一致させられないことも問題だ。コストがだいぶ下がってきたとは言え、また、風力発電所は立地条件が厳しく、送電線の距離などで立地によってコストが大きく変わる。ドイツは陸上で有力な候補地がもう無いのか、今後は以下のような洋上風力発電が増える予定だそうだ。

ドイツでは、計画経済というか、傾斜生産方式というか、そういう政治的な取り組みで風力発電にかかわり、風力発電を一大産業に作り上げた。しかし、環境と経済を両立するモデル・ケースのように思えるかも知れないが、実際のところはコスト競争力は、10年以上の取り組みなのに、まだ無い。日本でも「環境」を産業育成しようという話はあがっているが、ドイツの風力発電のケースを見ていても、そうは簡単には行かないようだ。クリーンエネルギーの導入の賛否はともかく、経済の高コスト化を招くことは、よく認識しておく必要はある。

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