2010年7月8日木曜日

医療や介護は、機械化できるか?

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従来は医療や介護には人手が欠かせないと思われてきた。もちろん医療現場では、CTやMRI、X線などの高価な検査用の機械は使われているし、使い捨てをしているメス1本や注射器1本にしても実はそれなりの金額がする。しかし、医者や看護士などに比例した数の患者の面倒しか見られないわけで、労働集約的な産業であるのは代わりが無い。しかし少しづつだが、この常識は覆されつつある。ロボットが医療現場にやってきたのだ。

BBCによると、スコットランドではロボットによるリネンや食事、医薬品、医療廃棄物の配送・回収を行えるシステムを備えたForth Valley Royal Hospital病院を3億ポンドで建設中だ。従来は配布物と廃棄物を同じ人間が扱っていたのだが、それぞれの用途のロボットに作業させられるので、感染症対策に有効だとか。床掃除をするロボットも投入される。ロボットは人間を置き換えるものではないものの、病院スタッフが患者と接する時間を増やすことができるらしい。

日本では看護士の重労働から、その人数の不足が指摘されており、こういった機械化は作業負担の軽減と労働力の補完を行えることができるから、医療現場では大いに期待されているのではないであろうか。

初期投資は膨大になる

しかし、日本の病院は建設費の抑制が求められているので、こういう機械化病院は成立しないかも知れない。以下はスコットランドの病院の建設中の動画だが、大規模な工事が行われているのが分かるであろう。400億円近い金額を投じており、収容数なども問題になるが、これは日本の病院建設のモデルケースの10倍ぐらいになる。ベッド数が632床と大きめの高知医療センターでも233億円で400億円には届かない。日本では公立病院が民間に比べて建設費が高くなっており、病院経営を圧迫しているとされ、問題になっている(四国新聞社)。現状の日本では、これだけの大規模な機械化は、国立病院でも難しいかも知れない。

日本の病院も、既に機械化されている部分もある

実際には受付や会計は、機械化されている部分も多い。2004年に電子カルテ化と電子レセプト(診療報酬明細書)が厚生省主導で進んだため、ここの部分は電子化が進んでいる。また、調剤や洗浄・殺菌も既に機械化が進んでおり、一部では検体検査も完全自動化されているらしいので、一昔前に比べると病院内での人間の作業は減っている。また、なぜか日本の病院は医療機器を買うのが大好きなので、CTやMRIの普及率は異常に高い(nikkei BPnet)。ただし、医療の自動化は進んでいるのだが、Forth Valley Royal Hospital病院のようなロジスティックの自動化は世界的にもあまり進んでおらず、投資額で見ると2%程度にしかなっていない(DREAM NEWS)。

機械化の方向性を考える時期

スコットランドの病院の機械化投資の目的は、看護士の労働負荷の削減であろう。今までの日本で行ってきた投資は労働負荷の削減だけではなく、医療サービスの向上にあてられてきた。しかし、医者・看護婦不足が言われるなか、事務作業の効率化を進めても効果的とは言えないかも知れない。日本の人口あたりの医者の数は2人と、ドイツの3.4人、米国の2.4人と比較すると少なくなっている。就業看護士数は7.8人と米国の7.9人とほとんど変わらないが、世界的に看護士不足なのは変わらないようだ(医療制度の国際比較)。従来よりも、もっと労働負荷が高く、人材が確保できない部分の作業の機械化を進めていくのが適当ではないであろうか。東南アジアから看護士を受け入れる計画が進んでいるが、東南アジアで看護士が今後も余剰であり続けるわけでもないし、日本語の問題があるので円滑に計画が進むかは疑問だ。このような状況を考えていくと、日本もForth Valley Royal Hospital病院のような、大規模な機械化投資を始めて見る価値は十分にあるように思われる。

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